5. サイエンスポイントと資金稼ぎ へ

 

6. マニューバ実施の訓練とKerbin高軌道での科学実験

 

これまでは「だいたいこのくらい・・・」という感じでパーツを取り付けてロケットを設計してきました。しかしながらこの方法では、ロケットの性能を見極めながら設計する事が極めて困難です。加えて、飛行中も残り燃料は緑色のバーでしか表示されないため、残りの燃料でどこまで行けるのか常に不安が付きまといます。Kerbin周回軌道では燃料が少なくなれば軌道離脱噴射をして地上に戻れば問題は生じませんが、月面で燃料切れを迎えると帰還不可能となります。
このような問題を回避するため、ロケット組立時と飛行時に「このロケットはどこまで遠くに行けるのか?」を明らかにする必要があります。これを実現してくれるMOD(追加機能)が「Kerbal Engineer Redux(KER)」です。
そして、KERと並んで航行の助けとなるのが「マニューバ」です。マニューバはKERと組み合わせることで大きな助けとなるので、本章ではKERの導入・使い方とマニューバについての2つについて取り上げ、その過程でついでに更なるサイエンスポイントの取得を目指します。

6.1 Kerbal Engineer Reduxの導入

Kerbal Engineer Reduxはこのページでも再配布を行いますが、公式ページのリンクも貼ります。KSPのバージョンが上がった際はKERも高確率でアップデートされるので公式ページから最新のKERを入手して下さい。
(2020/02/19時点でKSPのバージョンは1.9)

KerbalEngineer-1.1.7.1 ダウンロード
(2019/10/08版, 903KB,
SHA256:08A7BB641A7720B060CD4485A9566CCDF2F6946337C9756CFE0E8F90D712CCA5)
※このKERはver.1.8までの対応ですが筆者のver.1.9環境でも動作を確認しています。

公式ページ
Releases · jrbudda/KerbalEngineer · GitHub
https://github.com/jrbudda/KerbalEngineer/releases

 

Kerbal Engineer Reduxを含むMODの導入方法は、zipを展開して出てきたKerbalEngineer-1.1.7.1フォルダをそのままKerbal Space ProgramのGameDataフォルダにコピーするだけです。Kerbal Space Programフォルダの場所はSteamの設定に依存しますので、Windows検索などで見つけて下さい。

MODを置くフォルダ

MODを置くフォルダ (画像は1.1.3.0版ですがコピー先は同様です)

導入が成功するとロケット組立棟で機体を呼び出すと右上にKERのウィンドウが表示されるようになります。また、組立棟のパーツカテゴリ「科学機器」に「ER-7500 Computer Flight Unit」と「Kerbal Engineering System」の2パーツが追加されます。このどちらかを機体のどこかに(Kerbinまで戻ってくるパーツを推奨)取り付けると、飛行中も機体データを閲覧することが可能です。またKERウィンドウはドラッグで移動可能で、「ORBT」などのボタンを押すとデータの表示/非表示が選択できます。

KERのウィンドウ

ロケット組立棟でのKERのウィンドウ

コマンドポッドやサービスベイへの取り付けを推奨

コマンドポッドやサービスベイ付近への取り付けを推奨

パーツの取り付けにより飛行中も各種データを表示可能

パーツの取り付けにより飛行中も各種データを表示可能

Kerbal Engineer Reduxの詳しい説明や導入方法は以下の先達のサイト様が詳しいです。(読まなくても月から帰って来れるようにこのサイトは作ってあります。)

KSP Mod紹介その2 Kerbal Engineer Redux
http://blog.livedoor.jp/kproplab/archives/2947918.html
(アクセス日:2018/02/13)

MOD・ツール/インストール方法 – Kerbal Space Program Wiki*
http://wikiwiki.jp/ksp/?MOD%A1%A6%A5%C4%A1%BC%A5%EB%2F%A5%A4%A5%F3%A5%B9%A5%C8%A1%BC%A5%EB%CA%FD%CB%A1
(アクセス日:2018/02/13)

 

6.2 Kerbin高軌道での船外活動およびマニューバ作成の練習

前章で「宇宙飛行士センター」をアップグレードしたため、宇宙飛行士がKerbin外(宇宙)でも船外活動が可能となりました。他にも「ミッションコントロールセンター」と「トラッキングステーション」をアップグレードしたために軌道上でマニューバの作成が可能となり、遠方の天体まで到達できる環境が整いつつあります。
しかしながら、月などの遠方の軌道から大気圏突入を行うとその際に晒される熱も過大なものとなり、特にサービスベイに入らないサイエンスジュニアが破壊される可能性があります。
よってこれらに新要素に対応する練習を月に行く前に行い、その上新規サイエンスポイントの収集も兼ねてKerbin高軌道で実験をする事にします。

・ロケットの組み立て

前章で用いた旅客2人乗りの周回軌道用ロケットを改造します。

以前に使った2人旅客ロケット

以前に使った2人旅客ロケット

まずMk1クルーキャビンを取り外し、代わりにサービスベイを付けます。また、オレンジ色側面パラシュートを機体上部に2個対称配置で増設します。
そして先端のMk16パラシュートを一時取り外し、コマンドポッドとの間にパーツカテゴリ「科学機器」から「実験用記録装置ユニット」を取り付けます。
このパーツは全ての科学機器のデータを収容する事ができるため、データ収容後このパーツのみをKerbinで回収すれば、サイエンスポイントが得られます。その上、データを回収した温度計と圧力計は再使用が可能になります。また、非常に小さく軽く耐熱温度も高いため、大気圏突入も容易と利点尽くしのパーツです。

実験用記録装置ユニット

実験用記録装置ユニット Mk16パラシュートとコマンドポッドの間に取り付ける

サービスベイの中身にはいつも通りにGoo、温度計、圧力計を2個対称配置で取り付けます。
さらに、サービスベイの天井側にパーツカテゴリ「電気機器」から「Z-100 リチャージブルバッテリーパック」を2個対称配置で取り付けます。電力は主にサイエンスデータ(クルーレポートとEVAレポート)の送信に用います。

サービスベイの中身 天井側にバッテリーを取り付ける

サービスベイの中身
天井側にバッテリーを取り付ける

そして、実験用記録装置ユニットにパーツカテゴリ「通信機器」から「コミュノトロン16」とパーツカテゴリ「科学機器」から「ER-7500 Computer Flight Unit」(Kerbal Engineering Systemの方でもOK)を取り付けます。コミュノトロン16はいわゆるアンテナでサイエンスデータの送信が可能になります。そしてER-7500では飛行中でのKERの利用が可能になります。
そしてサービスベイの下に、耐熱シールド(1.25m)、スタックデカプラー、サイエンスジュニア の順番でパーツを取り付けます。

アンテナとKERパーツ

アンテナとKERパーツが上部の赤丸で示されている。最下部のサイエンスジュニアは帰還時に投棄される

そして、機体の2段目以降をサイエンスジュニアに繋ぎます。
また、固体燃料ブースターを増やします。固体燃料ブースターと機体を繋いでいるラジアルデカプラーを左クリックし、パーツを掴んだまま画面左下の「対称配置の個数切り替え」で4個の対称配置に変更し、そのまま機体下部まで持っていくと固体燃料ブースターをラジアルデカプラーや針金を保ったままで4個の対称配置で装着する事ができます。
さらに、固体燃料ブースター4つはやや推力が強いので、固体燃料ブースターのいずれか1つを右クリックして推力制限を75に設定します。1つ設定すれば対称配置した他の3つも同様の推力制限となります。

ラジアルデカプラーを左クリック

ラジアルデカプラーを左クリック

固体燃料ブースターを置かずにそのまま対象配置を4個に設定

固体燃料ブースターを置かずにそのまま対称配置を4個に設定

ラジアルデカプラーと針金を保ったまま4個の対称配置で取り付けることができる

ラジアルデカプラーと針金を保ったまま4個の対称配置で取り付けることができる

右クリックからメニューを開き推力制限を行う

そして2段目にFL-T200燃料タンクを1つ追加し、打ち上げシーケンスを確認して、機体を保存し、後は1段目燃焼終了まではいつも通りに周回軌道へ打ち上げます。
この機体も固体燃料ブースターのの推力が強いので、高度45000m程度で角度を東0度に傾けるといい感じです。

機体全体

機体全体

・マニューバの設定

トラッキングステーションをアップグレードしたため、機体の現在の軌道が青色の線で示されています。軌道のどこでも可能なのですが、試しに「AP」付近をクリックすると、「マニューバを追加」が表示されます。それをクリックするとマニューバが設定できます。マニューバ設定では順行マークまたは逆行マークをドラッグすると「その地点で加減速を行った場合の新しい軌道」をオレンジ色の線で示してくれます。

マニューバの追加を行う

マニューバの追加を行う

マニューバの設定画面

マニューバの設定画面

ここではAP付近で加速のマニューバを設定します。順行マークをドラッグし続けると出現するAP(遠地点)が300000m付近になるまでドラッグします。そうするとNavball上でそのマニューバを行うのに必要な加速量(デルタV)も表示してくれます。これとKERの「DeltaV Total」を比較すると残り燃料がマニューバに十分かどうかが判断できます。

また、マニューバを設定した直後はNavball右下の「推定噴射時間」がおかしい場合があるので(この表示だと17日間!噴射し続けると書いてある)、その際は一瞬だけZキーを押して推力を全開にしてすぐにXキーで噴射を止めると正しい表記となります。

必要噴射量も表示される

必要噴射量も表示される

ZキーとXキーで一瞬だけ全力噴射を行うと正しい表記になる

ZキーとXキーで一瞬だけ全力噴射を行うと正しい表記になる

正しい推定噴射時間が表示されたら、Navball上に出現した青色のターゲットマーカーと機体の向きを合わせ、「ノード位置までの秒数」+ 推定噴射時間÷2で計算される秒数まで待機します。
上の画像では、
(-47秒)+(47秒÷2)=(-47秒)+ 24秒 = -23秒
まで待機です。「ノード位置までが」-23秒になったらZキーを押して全力噴射を開始します。この一連の計算は今まで、「だいたいAPの1000m手前で全力噴射をする」というヤマ勘で行っていた動作を計算で行ったものです。
全力噴射を行うと必要噴射量が減っていくので、だいたい残り10m/s前後になったらXキーで噴射を一度止め、WSADキーでターゲットマーカーに合わせてからShiftキーを一瞬押してスロットルを少し開けてゆっくりと必要噴射量を減らしていきます。必要噴射量がおよそ5m/sくらいに収まれば大丈夫です。必要噴射量右隣の緑色のチェックマークをクリックしてマニューバを閉じます。
これで一連の周回軌道投入マニューバは終了です。

噴射終了地点

マニューバが終了した状態

 

・船外活動の実施

「宇宙飛行士センター」をアップグレードしたため、宇宙飛行士のEVA(Extra‐Vehicular Activity, 船外活動)が可能となりました。画面右下の「EVA」ボタンを押すと選択された宇宙飛行士が船外活動を行います。
また、機体からパイロットがいなくなるのでSASがオフになります。機体に戻ったら再度有効にする必要があります。

「EVA」ボタンから船外活動

「EVA」ボタンから船外活動

EVA中の宇宙飛行士を右クリックすると「EVAレポート」ボタンが出ます。これをクリックするとEVAレポートを書く事ができ、これもサイエンスポイントとなります。その後「B」キーで機体に戻るのですが、機体の中でコマンドポッドを右クリック→「保存済みのレポートを見る」→「データを送信する」で地上にレポートを送信できます。クルーレポートもほぼ同様の操作で送信できます。これで新しく別の新しいレポートを書くことができます。

しかし、レポートの送信は機体に送信アンテナが付いている必要がある上に、1レポートの送信に電力を50程度と大量に消費します。電力は画面右上の燃料タンクの形をしたマークで見れます。コマンドポッドに蓄えられる電力が50、Z-100バッテリーに100であり、電力は機体制御にも用いるのでそこまで多くのレポートを現段階では送信する事ができません。電力は発電能力を有するエンジンの噴射または後に開発する太陽電池などで充電する事ができます。

また、「レポート」以外のサイエンスデータは送信するとサイエンスポイントが減ってしまうため、送信しないでKerbinまで持ち帰ります。
逆に「EVAレポート」、「クルーレポート」はいつ送信してもサイエンスポイントは減りません。

EVA中のジェバダイア・カーマン

EVA中のジェバダイア・カーマン

EVAレポートの送信

EVAレポートの送信

 

・Kerbin高軌道での科学実験

惑星Kerbinは高度250000m以上の宇宙空間が高高度宇宙空間であり、多くのサイエンスポイントを得る事ができます。
EVAレポート送信後待機し、高度が250000m以上となったら各種科学実験(サイエンスジュニア、Goo、温度計、圧力計、クルーレポート、EVAレポート)を実施します。クルーレポートとEVAレポートはこの場で送信してしまいます。

 

・実験用記録装置ユニットの使い方、データ収容
実験終了後、機体上部に付けた「実験用記録装置ユニット」を右クリックして、「コンテナ:全データを収集」をクリックすると、機体の全科学機器のデータをユニットにまとめて収容してくれます。
これで帰還中に熱でサイエンスジュニアなどの科学機器が破壊されても(あるいは投棄しても)データは残り、サイエンスポイントを得る事ができます。その上、温度計と圧力計は状態がリセットされ再度測定する事も可能となり、非常に便利です。
ただし、「サイエンスジュニア」と「Goo」のリセットには科学者(ビル・カーマン)が必要です。今回はビルがいないのでこの2つのリセットはできません。

実験用記録装置ユニットを用いる

実験用記録装置ユニットを用いる

気圧計が再使用可能になっている

気圧計が再使用可能になっている

 

・帰還

F5キーでクイックセーブを行った後、AP付近で減速マニューバを設定・実行し、PEを35000m付近まで下げます。その後スタックデカプラーを作動させ、第2段とサイエンスジュニアを投棄します。後はいつも通り、「逆行」維持を起動させ、大気圏に突入するだけです。

減速マニューバを設定中

減速マニューバを設定中

今までは神経を尖らせて持ち帰っていたサイエンスジュニアを投棄

今までは神経を尖らせて持ち帰っていたサイエンスジュニアを投棄

熱に弱いパーツが外部に無い上に機体重心も低くなったので楽々帰還

熱に弱いパーツが外部に無い上に機体重心も低くなったので楽々帰還

着陸した地点でも可能なら科学実験(温度計、圧力計、クルーレポート、EVAレポート)を実施します。
※実は最初の段階からKerbin上ではEVA及びEVAレポートは実行可能でした。このサイトでの今までのサイエンスポイント計算にはKerbin上のEVAレポートは含まれていないので、もしもサイエンスポイントが僅かに足りない場合はKerbin上でのEVAレポート(クルーレポートも)を集めると良いです。(発射台、組立棟付近、海上、草原、砂漠などなど)

砂漠での科学実験

砂漠での科学実験

今回の飛行で91サイエンスポイントを得ました。これで合計のサイエンスポイントは163です。

サイエンスポイントが増えた

サイエンスポイントが増えた

このサイエンスポイントで新しいパーツを開発します。先進的ロケット工学(45ポイント)と燃料システム(90ポイント)を開発します。135ポイントを消費し、残りのサイエンスポイントは28ポイントとなりました。

先進的ロケット工学と燃料システム

先進的ロケット工学と燃料システム

 

第6章終わり

 

7. 月遷移軌道-月周回軌道への到達と帰還