化学/生物系の実験方法 (IQ1 ver.)

この記事は IQ1の2まいめっ AdC2018 の5日目の記事です。

IQ1の2まいめっ Advent Calendar 2018 – Adventar
https://adventar.org/calendars/3205

文章:kazz @gks11519

 

 

私は化学なのか生物なのかよくわからないみたいな研究をあるTIT大学院でしていました。卒業してから今現在は極めて微妙な地位にいます。
低IQの化学・生物実験はこんな風にやるんだぁ~~~と一例としてご笑覧頂ければ幸いです。
またこの文章には不正確な部分が多数予告なく含まれています。IQ1なのでお許しください。

 

化学・生物系の研究の基本の流れは

  1. サンプルを用意する

  用意する方法
  ・自分で化学合成する
  ・任意の実験を行った細胞かマウス(ハツカネズミ)を用意する
  ・自然界から取ってくる(水や土などなど・・・)

  1. 適切な処理をして測定装置に入れて測定
  2. 測定結果をUSBメモリで回収(測定機器のインターフェイスはだいたいスタンドアロンのPC)
  3. 自分のPCで測定結果出力のxlsやcsvファイルをエクセルで開いて分析する
  4. 1.に戻る

 

という感じです。USBメモリが重要です。
そして自分のPCで主に使うのはワードとエクセルです。なのでショートカットキーを覚えているとその分幸せになれます。
あと、学部の先生20人くらいに「LaTeXかTeXって知ってますか?」と聞いても誰も知らなかったです。(私も使ったことないです。)
最近のNatureとかに載っている論文の図ってベクター画像なんですけどどうやって投稿しているのかしら。

 

実際の実験

  1. 化学実験編
  2. 細胞実験編
  3. 動物実験編

 

1. 化学実験編

私の所属は有機合成がメインの研究室ではありませんでしたが有機合成も行っていました。

ガラス器具の組み立て

図1 ガラス器具の組み立て

化学合成というと試験管やフラスコを手で持って振り回すようなイメージですが手には持たないです。図1みたいなジャングルジムみたいな棒と万力みたいな物体でガラス器具を固定して、組み合わせて合成の場所を作ります。
また化学反応の中には水や酸素があると反応しないものもあるので、その時はアルゴンガスと真空ポンプを駆使して反応系内からそれらを追い出します。もちろん原料を投入するときも禁水・禁酸素です。

そして、筆者のIQが極めて低いために反応系内に必要な部品を入れ忘れる時があって、装置が組みあがってから気付くのでその時はせっかくの禁水禁酸素を解除して部品を入れて、また禁水禁酸素作業をやり直すのでやる気中折れです・・・

あと発がん性のベンゼンやジクロロメタンを間違って手に被ったりすると嫌な気分になります。

 

 

使う測定機器

・電子天びん
重さを測る機械。あらゆる実験の基本。これがないと全ての実験ができないと言っても過言ではないです。
共有機器なので、私が測っている時に後ろに順番待ちのドクターや助教が来ると「早くしろよ」的なプレッシャーで手が震えます。
また、ラボ全員が天びんを使うのでこれの順番待ちや使った後の掃除が汚いなどの理由でラボ内紛争が絶えません。穏やかな日は汚い言葉での罵り合い、激しい日には教授も参戦した殴り合いのケンカがしょっちゅう行われています。
有機化学をしている人間はだいたい短気なので怖いです。

 

・NMR(核磁気共鳴)
分子の構造を探る測定機器です。

IQ1と謝罪行脚

https://kamomemew.bitbucket.io/Others/2017/iq1adc.html

これの機器です。
原理としては分子に強烈な磁場を掛けると結合している水素原子が磁場で緊縛され、そこに電波を照射すると水素原子が結合している個所の影響で共鳴したりしなかったりするのでその帰ってきたシグナルを不思議なおまじない(a.k.a.フーリエ変換)をかけるとチャートが出力される。
でもIQ1にはチャートが読めないのでPCでのチャート予測結果と比較して読めたふりをしていました。
最近のNMRは照射周波数が1GHzに達したらしいですが、「1GHz達成!」って聞くとPentiumⅢ v.s. Athlonのクロック対決を思い出しますね。

 

・FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)
分子を同定したりする機械。分子に赤外線を当てるとそれを吸収して分子が振動したりしなかったりするので、吸収された分減った光のシグナルを得てそこに不思議なおまじない(a.k.a.フーリエ変換)をかけてチャートを出力。でも読めない。

 

・HPLC(高速液体クロマトグラフィー)
混合物の溶液から物質を分離して測定する機械です。
原理としては、筒の中に分子選択的な吸着剤(色々種類がある)を詰めてそこに混合物溶液を流すと吸着剤に吸着されない物質は早く流れ出て、吸着される物質は遅く出てくるという感じです。分離したい物質に応じて吸着剤(分子量依存、親油性依存、金属親和力依存などなど)を使い分けます。
例えるなら、私(物質)がコミケの刀剣乱舞島(吸着剤A)の通路を通ると寄り道しないので出口まで素早く到達しますが、艦これ島(吸着剤B)の通路を通るとあっちこっち寄り道するので中々出口まで出てこない的な感じでしょうか。
昔、とりさん先生とトイレ先生に泣きついてデモプログラムを作って頂きました。(報酬は焼肉)
また、これは測定時間が長い共有機器なので機器の予約を巡ってラボ内乱闘が絶えません。

 

・DLS/SLS(動的光散乱/静的光散乱)
レイリー散乱(空が青いやつ)を使って溶液内の粒子径をnmスケールで測れる機械。
SLSの方は粒子の詳しい形まで分かるらしい。原理が全く理解できない。

 

・MALDI-TOF/MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法質量分析)
主に高分子をレーザーで蒸発させて電場で加速させてその飛行時間の差から質量を求める測定機器。
田中耕一氏が2002年にノーベル化学賞を受賞した機器です。
名前がマトリックス/支援/レーザー/脱離/イオンとかいう厨二っぽい言葉のオールスター天丼。

 

・ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)
元素の種類・濃度に特化した分析機器。これまた誘導結合プラズマって言葉が中二病っぽい。

 

・超純水製造装置
測定機器ではない。洗浄とかに使う超純水を作る。
前の大学は建物に1つしかない研究室間の共有機器で、超純水を大きなボトルに汲んでいる最中は暇なので他の研究室の人と現代版井戸端会議とかしてた。

 

・UV-VIS-NIR(紫外可視近赤外分光光度計)
・FP(分光蛍光光度計)
光で物質を探る機械。だいたいどこの研究室にもある。

 

 

2. 細胞実験編

ラボ内で細胞を培養して、そこへ合成した化学物質をかけて反応を見る。細胞が物質を取り込んだり死んだりするのでそれを観察。
正常な体細胞は50回くらい分裂するともう分裂しなくなりますが(ヘイフリック限界)、がん細胞は永遠かつ無限に増殖し続けるので実験しやすいです。
細胞は他の研究室から分けてもらったり、下の細胞バンクから買ったりする。

JCRB細胞バンク – 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
http://cellbank.nibiohn.go.jp/

基本的な操作はマイクロピペットっていう液体を吸ったり出したりする器具で行います。
これは単純労働のため「ピペット奴隷」という言葉で一部で揶揄されています。労働の例として、96個の小さい穴にそれぞれ全てに、均一に10000個の細胞を撒くっていう操作を1日20回くらいすると目と肩が辛くなります。特にそのプレートが透明なプラスチックでできているので目のピントがとても合わせにくくて疲れる。

 

実験機器

・遠心分離機
濁った液体を遠心分離して重い物体(濁り)を下に沈める装置。具体的には細胞を増殖させた後の培養液を遠心分離すると細胞は重たいので下に沈んで回収がしやすくなる。
強力なモーターで遠心分離するので格好の労災ポイントで、私のラボでも部品の固定が不十分で部品が飛び出してきて助教の首が飛びそうになったり(比喩表現ではない)、昔に他のラボの教授が朝出勤したら同僚が遠心分離器に巻き込まれて死んでいたとか聞いた事あります。

 

・クリーンベンチ
無菌の作業場所。細胞とその培養液は雑菌が入ると実験にならないので基本的にこの中で行う。手を入れる時は手袋をしてエタノール消毒する。
雑菌などが混ざって汚染されることを「コンタミ」というのですが、妙にコンタミさせる人がラボにいて、少し冗談で汚物扱いされてました。
これも共有機器なので例によって後片付けや順番待ち・予約でケンカが絶えない。
IQが2くらいまで上がると自分の実験進捗などを踏まえて他の人と利用権の交渉をしたりする。3まで上がると買収工作とかもしてる。

 

・共焦点レーザー顕微鏡
焦点が2つある顕微鏡。深さ方向への解像度がすごく高いらしい。蛍光観察も可能なので、「緑色蛍光タンパク質が細胞内のどこにいるのか?」みたいなのも見える。細胞骨格も蛍光染色すれば見える。画像例↓
Confocal microscopy – Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Confocal_microscopy
「世の中を動かすには言葉を並べるより一枚の綺麗な顕微鏡写真を撮る事だ」みたいな事を学部で聞きましたが、結局世の中顔みたいで悲しくなります。
あと卒業前に自分の精子でも撮れば良かった。3000万円くらいするお高い機器らしいですし。

 

・フローサイトメトリー
液体の流れで細胞懸濁液から細胞を1個1個分離して連続して数千個を蛍光観察するとかいうよく分からない機器。顕微鏡は細胞1個を観察するのに適していますが、こちらは「細胞の群れ」を解析して統計解析するのに適しているそうです。
細胞培養液の投入は手動なのでこの実験をしている最中はとにかく忙しい。自動投入の機器があると便利。

 

・次世代シーケンサー
DNAの塩基配列を超高速で読み取る機械。2003年のヒトゲノム計画だとヒトの全DNAを読み取るのに13年と2700億円かかりましたが、2010年代前半に登場した次世代シーケンサーは同じ読み取りを1-2週間、10万円ほどでやれます。(図2)

図2 タカラバイオ社の次世代シーケンサー解析

図2 タカラバイオ社の次世代シーケンサー解析

引用元 https://catalog.takara-bio.co.jp/PDFS/custom_service_of_ngs.pdf

気になるあの人の全DNAもその人からすね毛を採取して(同意は得ましょう)17万5000円払えば分かっちゃいます。

原理としては10万字ある文章を1人で書き写ししてたら時間がかかりますが、その文章を100部コピーしてそれぞれをランダムに100ページに分割して、10000人で一斉に書き写して、その後文章の重なりを利用して書き写し断片から文章全体を再構成する感じでしょうか。(つまり1人で1000字書き写せば良い。再構成する時間を除けば書き写し速度は100倍)
利用が拡大しつつある分野で色々な応用例がありますが、例としてがん組織なんかはがんの内側と外側の細胞とで遺伝情報が少し違っていたり(フリューダイムのC1システムとか使う)、同じがんでも患者によって微妙に遺伝情報が違ったりするのでそれの解析に使ったりすることもあります。

 

 

3. 動物実験編

細胞実験で作った化学物質の効き方を確かめたら動物実験に移ります。特別な理由がなければ体が小さくて同じ飼育スペースでたくさん飼える(≒サンプル数を増やしやすい)マウス(ハツカネズミ)を用います。新宿歌舞伎町などの汚い所でたまに見る子猫くらいの大きさのネズミはラット(ドブネズミ)で全くの別種です。
ちなみに『マウス・ラット実験ノート(羊土社)』によるとマウスとヒトは遺伝子の一致率が90%くらいしかない上に、体重が3000倍くらい違う(体表面積と体重比率も当然著しく異なる)ので、マウスで望む結果が出てもヒトでの治験になると効かない・・・みたいな事例はしょっちゅうです。

マウスも色々な品種があります。下記のこういう会社で売っていて、カタログ見るだけでも面白いです。値段は普通のマウスで1500円/匹、ヌードマウスで5000円/匹くらい。
国内生産動物 | 日本チャールスリバー
https://www.crj.co.jp/product/domestic

CLEA Japan,Inc.
http://www.clea-japan.com/CLEA01_00.html

中でも有名なのがヌードマウス(図3)で、これは免疫がほぼ働いてないのでその体にヒトのがん細胞を生着・増殖させる事ができます。

ヌードマウスの説明 浜島書店『ニューステージ新生物図表(2011)』より

図3 ヌードマウスの説明 浜島書店『ニューステージ新生物図表(2011)』より

免疫不全マウスについて詳しくは拙稿「担がんマウスモデルと免疫不全マウスたち」をお読み頂ければと思います。
担がんマウスモデルと免疫不全マウスたち: ナマカガク。
http://namakagaku.seesaa.net/article/458932146.html

 

基本的な実験の流れは
 1. 健康マウスあるいはがん持ちマウスに用意した化学物質を静脈注射
 2. 所定の時間でマウスを採血→安楽死→解体して臓器を取り出す
 3. 臓器のどこに物質が集まったか測定

マウスの安楽死は首の骨を折る事で行います。手ずから哺乳類を殺す機会はあまりないですね。初めて自分でやった時は少し嫌な気分になりましたが5匹くらいやるとなんとか慣れました。
そしてマウスの犠牲は最小限に抑えなくてはならないのですが、マウスをたくさん殺す=実験を多くやってる=偉いみたいな感じで1週間にどれだけマウスをキルしたかというマウスキルストリーク数で競い合うみたいな所も研究室内でありました。(一応全て必要な実験です。)

 

・化学物質をどうやって見つける?
普通は投与した化学物質を見ることはできないので、物質がマウス体内のどこに行ったか追いかけるのに何らかのラベリングを投与物質に行う必要があり、主に蛍光ラベルと放射性同位体ラベルが使われます。
蛍光ラベルは取り扱いが簡単ですが、生体物質に蛍光反応を阻害されたり、または元からあった生体物質も蛍光を別に発してそれに阻害され正確さを欠く場合があります。
放射性同位体ラベルは反応が原子核崩壊なので全ての化学反応から妨害を受けず正確に測定できる利点がありますが、欠点として取り扱いが面倒、消費期限(半減期)があるといったことがあります。

 

・IVIS (In Vivo Imaging System)
蛍光ラベルに特化した測定機器です。マウスにガス麻酔をかけて眠らせて、皮を透かしてマウスが生きたまま臓器の蛍光観察ができる優れもの。
図4は乳がんを生着させたマウスに物質を投与してどれだけがんに集まるかを示しています。上が生きたマウスで、下が取り出した臓器の蛍光写真です。

IVISで撮影したマウスとその臓器の画像

図4 IVISで撮影したマウスとその臓器の画像

(画像引用元)イメージギャラリー | IVIS Imaging System | 製品情報 | 創薬研究機器・装置 | 住商ファーマインターナショナル株式会社http://www.summitpharma.co.jp/japanese/service/products/xenogen/gallery.html

定価8000万円くらいするらしい。時代遅れのネタですが、この中に入って自撮りしてSNSにアップしたら炎上しそう。

 

結論
なにかとっても難しかった。。。。。

 

化学系って割と陽キャ体育会系みたいな感じが強くて、エロゲやっている人は本当に少なくてPCを自作したりはんだこて握ったりする人は会った事がないですね。私がIQ1なのもあり疎外感を感じてました。

 

あと、卒業してからも悪夢の中で叱責されたり、「大学に行って単位取らなきゃ、実験しなきゃ」みたいなのを見て飛び起きて数分間幻覚を見たりするのですが、今日はこれだけ思い出して悪夢見なきゃいいなぁ・・・
低IQに化学と生物は難しかった。いつか全部笑い話にできるといいなぁ・・・

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